航空整備士を続けるメリットシリーズ第一弾は、「今後需要は拡大し、有資格者は重宝される」ということで、単純に需要が増えることと、整備士の数が減っていくことの両面から解説したいと思います。
また長い目で見た将来的な働き方も解説していきますので、最後までご覧ください。
2030年には現在の2倍の整備士が必要になる
国土交通省の中に乗員や整備士に関する政策を検討する「乗員政策等検討合同小委員会」というものがあります。
そこで作成されている資料に『2030年には2010年に比べて2倍の整備士が必要になる』という記載があります。
さらにアジア地域では現在の3.5倍もの整備士が必要となるという試算がされているようです。
なぜそこまで大量の整備士が必要になるのでしょうか。
当サイトでは独自に調査しましたので、解説します。
航空需要は世界的に増加傾向
2020年以降のコロナ禍によって旅客数は激減し、世界中の航空会社が窮地に立たされました。
しかし現在世界ではどんどん移動制限や隔離措置も緩和される方向にあります。
今後はコロナ前の水準を回復し、再度右肩上がりの成長に戻ると予測されています。
これはビジネスでの往来と国内旅行での需要が早期に回復していることに加え、今後は海外旅行の往来も回復していくことが予測されているためです。
更には世界的な人口増に加えて、これまで発展途上国と呼ばれていた国々が経済的に豊かになることで、旅行にでかける人口が増えることも大きな要因の一つです。
機材の小型化による航空整備士需要増
一昔前は幹線路線では特にですが、大型機による一括輸送がトレンドでした。
それが近年小型機・高頻度輸送にトレンドが移っています。
既に欧米ではLCCが定着し、ドル箱と呼ばれるような幹線路線においても小型機による高頻度輸送でエアライン間の競争が行われています。
日本においては元々空港の発着枠に余裕が無いことも影響し、制限が厳しかったことも理由としてあります。
それが近年の滑走路容量の増加や効率的な運用によって、日本でも小型機材による高頻度輸送の可能性も高まってきています。
機材の数が増えれば単純に整備士も多く必要です。
実際に欧米では路線距離1,000km程度であれば主力機種はB737等の座席数130~160程度の機材が投入されているのに対して、日本航空の羽田空港発着路線の平均座席数は330とのことなので、大きな乖離があるのは事実のようです。
団塊ジュニア世代の大量退職
こちらのグラフは国土交通省が平成25年に調査した整備士の年齢分布です。
この調査から10年近く経過していることを考えると、一番右の大きな山の整備士は既に退職済み、そして一番のボリュームゾーンである当時40~45歳(団塊ジュニアの世代)が現在50歳前後となります。
そうなると残り10年から15年で再び大量退職の時期を迎えることが分かります。
LCCやジェネアビでは事態はもっと深刻で、20代と50代にボリュームゾーンがあって、その間がごっそり抜けているという会社が多いようです。
どちらにせよ、あと10年もすればベテラン層が退職してしまい、今の20~30代が一気に主力世代として活躍することは避けられません。
航空業界のIT化による負担は軽減し、効率化の傾向
このまま整備士不足が続くと整備士の負担は増える一方じゃないか、と心配される方もいると思います。
確かに絶対的な人数は最低限確保する必要はありますが、一方でこれまで思うように進まなかった現場のIT化やDXによって効率的に運用できる部分も増えるとはされています。
例えば整備士訓練でのVRを使用したグランドランのシミュレーションや、エンジン整備の体験などは実際に実現されてきています。
また詳細な機体情報を見られる整備用アプリなどの開発も色々な方面で進んでいます。
整備マニュアルの閲覧やログブックへのサイン、計測器の記録、その他にも不具合情報を基に適切な人員配置ができたり、整備現場と管理部署とのコミュニケーションをリアルタイムに取れることによって整備作業の効率化の実現、部品手配の迅速化などが期待されています。
これまでは似たようなことができるアプリやシステムがあっても、それぞれが別システムで連携が取れていなかったり、そもそも端末が別だったりと制約が多かったのが問題としてありました。
これらの機能を一つにまとめた統括型アプリの開発によって現場の負担軽減効果もあると考えられます。
まとめ
今回は航空整備士を続けるメリットとして、航空整備士の需要は今後も拡大するので、人材として重宝される。
というテーマで解説しました。
コロナによる航空需要の激減はありましたが、今後回復して再度右肩上がりの需要拡大が予測されています。
理由としては大きく以下3点です。
- 航空需要は右肩上がりで拡大
- 機材の小型化・多頻度運航への移行
- 団塊ジュニア世代の大量退職
航空整備士として経験を積んで、将来は整備部門の管理職として活躍したい人にとっては航空整備を続けることも良い選択ではないかと思います。